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フルスタック・ディープテック・スタートアップという戦略

2014 年に Chris Dixon が提唱した『フルスタック・スタートアップ』という概念について、以前から翻訳したり、記事を書いたりしていました。

このフルスタック・スタートアップにディープテックを組み合わせたものが、『フルスタック・ディープテック・スタートアップ』です。アメリカのVCである Cantos Ventures の Ian Rountreeが提唱しています。

フルスタック・ディープテック・スタートアップの特徴は、

「画期的な技術」を販売するのではなく、「最終製品」を提供すること

です。

宇宙領域で言えば、「高度なロケットエンジンを売る」という事業をするのではなく、ロケットを売る(あるいはそのサービスを売る)のがフルスタック・ディープテック・スタートアップです。

そして、私自身も、ディープテック・スタートアップだからこそ、フルスタック志向のほうが良いのでは、と感じることが多々あります。

ではなぜディープテックはフルスタックのほうが適しているのか――Ian が出演した年始の Energy Impact Partners の Podcast を聞いて、改めてその考え方を日本でも広く知っておいてほしいと改めて感じたので、記事にもまとめておきます。

簡単な要約

  • フルスタック化は、スタートアップが各種の摩擦(統合・運用・販売・責任)を自社で吸収し、学習速度と実装速度を上げる戦略です。結果として、TAM拡大や参入障壁にもつながります。
  • ただし、事業範囲が広がるため、CAPEX・規制・オペレーションのリスクを抱えるため、向き不向きの見極めと、事業構想がとても大事になります。

課題:なぜディープテックスタートアップはシリーズAで止まるのか

ディープテック・スタートアップは、主に大学の研究等の「Technology Readiness Level は低いが、大きな可能性のある技術」を中心に商用化することで、事業としての急成長を目指す、起業の一形態と見做されています。

その範囲は、宇宙、素材、創薬、電子機器、など様々な領域にまたがります。

共通しているのは、技術自体が事業のコアコンピタンスになる、ということです。

そのため、従来のディープテック・スタートアップのアプローチは、「画期的な技術を既存企業に売る」ことでした。

技術は「歯車」でしかない

しかし『レイヤー構造』のスライドで解説したとおり、技術は製品というシステムの一部でしかありません。

別の言い方をすれば、技術は製品がうまく機能するための『歯車』の1つです。

そして製品は工場での生産等の歯車の1つであり、さらに製品は会社の利益創出活動の歯車の1つといえます。

1つの「歯車」のために全体を置き換えるか?

歯車は他の歯車とうまく組み合わさることで、その機能を十全に発揮します。しかし噛み合わせが悪いとなめらかに機能しません。

事業全体のパフォーマンスを上げるということは、この歯車が連続的にかみ合うこと、いわゆるワークフローが流れていることが大事だということです。そのため、1つの歯車がどれだけ優秀だろうと、その歯車を採用するために、他の全てを変えようという判断にはなかなか至らないでしょう。

その結果、

「1つの歯車がどれだけ優秀でも、その歯車の採用のために他の歯車を全部入れ替える判断はしにくい」

という意志決定が起こりやすくなります。

例)高速な名刺のスキャン

身近な具体例を考えてみるとより分かりやすくなります。

たとえば私たちの普段のワークフローにおいて、「AIで名刺スキャンが5倍の速さになります」と言われたところで、名刺管理CRMの入れ替えはあまり考えないはずです。名刺のスキャンというのは、全体のワークフローのほんの一部でしかないからです。

「技術売り」で生まれやすい課題とリスク

従来型の「技術を部品として売る」モデルでは、次の摩擦が起きがちです。

  • 統合摩擦:既存ワークフローに合わせるための調整・カスタマイズが膨らむ
  • 意思決定摩擦:顧客社内の力学(稟議・調達・情報システム・現場・法務・監査)で結論が出るのが遅い
  • 運用摩擦:導入後の運用負荷(教育、保守、監視、監査対応)が増えやすい
  • 調達摩擦:部分最適のROIだと予算科目に乗りにくい/「今ある仕組みで十分」とされる
  • 実証から商用への断絶:PoCは通るが、本番運用の要件(品質・供給・安全・規制)で止まる

さらに困難を生むのは、こうした摩擦が事後に分かることによって、技術に求められるスペックや要求がどんどんと変わっていき、技術開発の方向性すらも変わっていく可能性があることです。

技術開発にどれだけリソースを注いでいたとしても、スペックが変われば、それまでの開発自体が無駄になることも多くあります。

「技術開発の進捗」という「偽の進捗」

ディープテックでこの難しさが露呈するのがシリーズAやその後のように思います。

技術自体の開発が進捗していることが事業の最初期には「評価」されます。一部の投資家から初期の資金調達まではできるでしょう。この結果、「この方向で良いんだ」とチームは思ってしまい、技術開発を進めてしまいます。

しかしいざ技術がある程度の性能になったあと、実際に顧客の現場に適用しようとすると、上記のような摩擦が生まれてきます。そうして技術開発の方向性がどんどんと変わり、余った資金で追加の技術開発をしていくことになります。

そしてシリーズAあたりにさしかかると、投資家の評価軸は「技術進捗」ではなく「売上」や「規模の可能性」などに変わってきます。しかしその準備ができていないチームは、往々にして残った資金で投資家の期待にマッチする十分な事業進捗(技術進捗ではなく)を出すことが難しくなっており、補助金でなんとか技術開発を進めていく道を選ばざるを得なくなる……ということが容易に起こります。

そうした評価される進捗の質的な変化を予見できていないことや、直近の投資家からの「技術進捗だけ」による高い評価によって、本来必要とされる活動に対して資源を割り当てられない、ということが起こりやすくなります。

フルスタック・ディープテック・スタートアップによる課題解決

そこでフルスタック・ディープテック・スタートアップ (Full-stack Deep Tech Startup: FDTS) です。

フルスタック・ディープテック・スタートアップは、これらの「技術売り」で発生しやすい摩擦を自社で吸収し、バリューチェーンを伸ばして、

  • 従来:部品売り
  • FDTS:製品売り

へと変えることです。

もう少し抽象化して話すと、摩擦はどこでも生まれるものの、従来起こっていた外部との激しい摩擦の部分は自社に内包し、外部との摩擦の少ないところまでバリューチェーンを伸ばすことで、相対的に摩擦を少なくする、ということなのかなと思います。

それがコモディティであれば、そのコモディティ製品を提供することなので、部品売りではなく製品売りとなります。

ただし、場合によってはモジュールを提供することだったり、あるいは製品以上のサービスを提供することだったりするかもしれません。

フルスタック・ディープテック・スタートアップのメリット

フルスタック・ディープテック・スタートアップのアプローチを取ることには、以下のようなメリットがあります。

(1) 自社でコントロールできる範囲が増え、学習と実装が速くなる

まず自社でコントロールできる範囲が増えることです。外部(既存企業の都合)に律速される範囲が減り、試行錯誤のループが回ります。スタートアップにとっての「スピード」は、単なる開発速度ではなく学習速度であるはずです。

スタートアップにはスピードが命だと言われます。『リーンスタートアップの限界』や『需要家のファーストペンギン』などの記事で、「顧客がビジネスの方向性を左右する」と書きましたが、自社の速度が外部によってどのように制約されないようにするかを考えるとき、フルスタックは1つの手法となります。

もちろん、その制約をトップ営業などでクリアできるなら、その限りではありません。

(2) 市場(TAM)を大きく取りに行ける

技術という部品を売るのは、その技術に相当な独占性がない限り、基本的にはスマイルカーブの中流に当たります。

一方バリューチェーンを伸ばしていくことで、収益性の高いところもカバーできるようになり、さらに大きなTAMにアプローチすることができます。また最終的に技術やオペレーションを磨いていけば、利益の幅も大きくなっていきます。顧客を掴むことで、さらなる製品開発も可能となるでしょう。

SpaceXはロケットエンジンを売るのではなく、ロケットを作り、衛星打ち上げサービスというインフラを売ったからこそ、宇宙産業が生まれ、Starlinkなどの新しい自社サービスを生み出すことができました。

(3) 参入障壁を築ける

フルスタックはデメリットも大きい(CAPEXや組織の複雑性)ですが、裏返すと、その高い山を乗り越えられれば他社に模倣されづらくなるということです。

たとえばTeslaなどの模倣はなかなか難しいものです。そのため、勝ちきってしまえば利益率が高まる可能性も高くなります。

なぜ今、フルスタック・ディープテック・スタートアップなのか

スタートアップがそうであるように、こうした概念には「なぜ今か」についての仮説が必要です。

(1) ソフトウェアによる再構築の機会

既存企業ではない形でソフトウェアが多くで使われるようになってきており、接続性が高まりつつあります。蒸気機関で動く工場から電気で動く工場への転換の際に必要だったのは、動力の技術的な転換そのものではなく、電気モーターによって生産レイアウトが変わったことであったように、工場の設計思想(生産アーキテクチャ)を変える点にあります。

逆に従来型の工場は、既存の設備があり、さらに投資もしてしまっているため、新しい電気という技術への乗り換えが遅れたという指摘もあります。(最近だと Duke の Damron (2025) など)

従来型の決定論的なソフトウェアによる確実性と、近年の確率的なソフトウェア(AI)による柔軟性の発展をうまく組み合わせることで、機械が agentic に動ける範囲と適用可能性が増えている、という風にも言えます。

ある意味で、今なら「Software-native」な「Full-stack Deep Tech スタートアップ」を作れることが、Why now の1つの理由です。

(2) 資金の獲得のしやすさ

10年前よりも、スタートアップが大きな資本を獲得できる環境が広がっています。フルスタックは初期に資本が要るので、この構造変化は重要です。

(おそらく10年前には歯牙にもかからないアイデアだったでしょう)

(3) 需要の変化(脱炭素、地政学など)

グリーンな製品への需要や、政治的リスクによるサプライチェーンの再編の需要など、従来の需要と異なる需要が立ち上がりつつあります。

この波は一過性ではなく、産業構造の再構築に接続し得るため、フルスタック型の「作って供給する」プレイヤーが価値を取りやすい局面が増えています。

フルスタック・ディープテック・スタートアップの例

では実際にこうしたスタートアップがいるのか、ということを振り返ってみます。

古いところでは以下のようなスタートアップが、このカテゴリに入るのではと思います。

会社

普通

フルスタック

SpaceX

ロケットエンジンを売る

宇宙サービスを行う

Tesla

バッテリーをGMに売る

EVを売る

最近だと以下のようなスタートアップがあるでしょう。

会社

普通

フルスタック

Anduril

防衛産業にSaaSを売る

防衛製品を売る

Solugen

バイオものづくり技術を売る

化学製品を売る

Hadrian

製造業向けSaaSを売る

アルミ部品を売る

ディープテックではありませんが、ソフトウェア領域でも同様です。

会社

普通

フルスタック

Flexport

物流業者向けソフトウェアを売る

輸送サービスを売る

Uber

タクシー会社向けSaaSを売る

タクシーサービスを売る

デメリット

フルスタックは万能ではありません。主なデメリットは次です。

  • 初期に大きな資本が必要(CAPEX)
  • 技術リスクに加えて、オペレーション/品質/供給/規制のリスクを内包する
  • サービスに寄せるほどスケーラビリティが落ちる場合がある(ラストワンマイルで人が介在する等)

しかしそうしたデメリットを超えてスピードが出せる、というのが、フルスタックのメリットです。

フルスタックが合わない事業

ただし、すべてのディープテックスタートアップがフルスタックに合っているかというと、おそらくそんなことはありません。たとえば以下のような事業はフルスタック・ディープテック・スタートアップでなくても良いかもしれません。

  • 現在の創薬は別で、技術だけで大きなビジネスが成立しやすいため、チャネル等も含めたフルスタックのリスクを取る必要はないでしょう。
  • 統合の摩擦が発生しない、技術単体がそのまま刺さるような技術もフルスタックを志向しなくても良いでしょう。
  • TRL/MRL/ARLが極めて低いと、技術の科学的検証が律速になるので、資金を投入してもどうしようもない可能性があります。
  • もし最終製品の中でとても重要な部素材であり、既存の10倍ぐらい良い性能があれば、部素材でも欲しいという人はいるため、部素材売りでも通用するでしょう。
  • 最終製品にブランド価値などの感覚的な価値が高いものも同じく難しいかもしれません。ただし、テスラのように、最終製品に対してブランドを作ることができれば、超過利潤を得ることができるというメリットもあります。

フルスタックが合う事業

一方、フルスタックが合う事業もあるように思います。

(1)需要リスクが小さい製品

1つめは需要リスクが小さい製品です。

作ることができれば顧客は買ってくれて、しかも大きな市場が待っている、という状態であれば、需要リスクは小さくなります。(需要リスクと供給リスクの記事も参照してください)

あとは技術開発やオペレーションで、供給リスクを下げながら、コストを下げることを実現できれば良くなります。

たとえばエネルギーや化学製品のコモディティは、どういう作り方であろうと、最終製品の機能は同じです。安ければ買われます。

フルスタックは供給側のリスクを取ることになるため、需要リスクの低い製品群であれば、リスクのバランスを取りやすいでしょう。

(2) システム最適化・学習曲線が競争力になる

ハード×ソフト×運用が密結合で、レイヤー間の結合が強いような場合、つまり単体の技術だけでは価値が出ない場合の事業もフルスタック向けだと言えます。

また学習曲線が効く領域も多いでしょう。運用データなどのフィードバックによるプロダクト改良、あるいは製造量によるコスト低減などです。

(3) 実証が難しい事業

フルスタックを志向することの良い点は、資本(と許認可)さえあれば、実証までの期間を一気に短くできることです。

あまり重要ではない部素材であったり、重要だったとしても数十パーセントの向上などであれば、おそらく顧客はその部素材のためにすべてを作り替えるという判断はせず、その説得に数年かかってしまいます。

そこで規模は小さくても良いので、いったんフルスタックで作り上げて、規模拡大とともに自社の担当するバリューチェーンを短くしていく、という手があります。

実際、いくつかのスタートアップはそうしたアプローチを作っています。まずは自社でフルスタックで実証して、そのあとに自分たちの利益の高い領域だけにバリュチェーンを縮めて、他の付加価値活動をパートナーに移管していく、という手です。

(4) マルチプロダクトを出せる事業

フルスタックが実現できたときには、マルチプロダクト化していく傾向にあります。顧客側との接点も多く、資本も大きいため、マルチプロダクト化はしやすいし、そうしたほうが売上も上がるためです。

多くを自社で内製しているため、組織設計さえうまくいっていれば、スピードと柔軟性を担保できて、競争力も確保できます。

事業領域としては、a16zの記事では以下のような領域に可能性があるのではないかと言われています。

  • 建設
  • 教育
  • 貨物輸送
  • 半導体製造
  • 公共事業

これ以外にも色々とあると思いますが、参考まで挙げてきます。

アウトプットを超えてアウトカムへ

Cantosの提唱するフルスタック・ディープテック・スタートアップは「最終製品」というアウトプットでした。しかしそれを越えてアウトカムに近づけば近づくほど、より収益は上がりやすくなります。

たとえばWaymoも、自動運転のソフトウェアでもなく、「自動運転車」という製品でもなく、人の輸送サービスを行うからこそ、今の評価額になっていると思われます。

実際、SaaSやRobot as a Service (RaaS)、あるいは運転保障サービスなど、製品ではなくSLAつきのサービスとして提供され始めているのは、製品を超えてサービスを提供することで、そこでデータや顧客接点を得て、さらに改善につなげていくことができるからです。

一方で、アウトカムに近いことで、スケーラビリティがきかなくなっていくサービスもあります。たとえばRIZAPなどは「痩せる」「筋肉をつける」というアウトカムを提供しますが、そうであるが故に人が介在する必要があり、ラストワンマイルでスケーラビリティが取りづらい構造になっています。Uberは、最後は人が介在しなければならないところをマッチングで解消していますが、それにも限界があります。

また、サービスに近づけば近づくほどオペレーションやリスクも増大します。そのリスクをどうやってソフトウェア等で緩和するか、というのは腕の見せ所ではないかと思います。

フルスタック・ディープテック・スタートアップのHow

ここからはかなり作業仮説の要素が強くなりますが、現時点で考えているHowの部分をお話します。

(1) 構想力

このフルスタックの事業は、供給のためのシステム全体を最適化していくことです。

エジソンが電球だけではなく、発電や送電、銅のコストも含めてシステム全体を考えていたように、かなり高い視座を持ちつつも、かなり細かな実験をしていくような、『構想力』が求められます。

ここで重要なのは、技術のロードマップの構想だけではなく、

  • 製造/供給/保守
  • 調達/契約/責任分界
  • 規制/認証
  • 価格と利益構造

までを含めた全体構想であることは拭きさせてください。

(2)ステージゲートなどのプロセス

1➡10➡100➡1000など、桁を1つずつ上げていく中でステージゲートを設けていく必要はあるでしょう。Liliumなど最初から多角化すると厳しいですし、Northvolt など大きなものを一気に作ろうとすると失敗する可能性は増します。

とはいえ、事業の競争環境によっては一部の桁を飛ばして、2桁上に行く、といったリスクを取る場合もあるかもしれませんし、技術によっては、1桁上と2桁上の規模感で異なる技術検証が必要で、その場合は1桁上げるステップを挟むのではなく一気に2桁上げるほうが合理的という場合もあります。

(3)スピードの確保

それぞれのステージゲート間ではシステム全体のすりあわせを一気にしていく必要があります。

また、初期は学習が命ですが、売上を立てにいくと品質・納期・運用が支配的になります。この二つを同じラインで回すと破綻しやすいので、組織をどのように運用するか、なども大事になってきます。

(4)リソースの確保

お金や人といった資源を大量に集めながら、その資源を効果的に使っていく手腕が求められます。お金については、エクイティだけではなく、補助金やデット、プロジェクトファイナンスなど、多様なお金の調達方法を知る必要があります。また日本には事業会社からの投資も多く、それらをうまく活用しながら、こうしたモデルを模索する必要があるでしょう。

人については、研究者だけではなく、製品開発から運用担当者、法規制担当者まで幅広く揃えながら、事業として統合していく必要があります。

起業家と投資家の会話

ディープテック・スタートアップは技術の商業化ではない、というのを何度も書いてきました。このフルスタック・ディープテック・スタートアップの概念は、そうした議論にも有用ではないかと思います。

ただし、このフルスタック型は投資家側のリスクが増えるアプローチであることには留意が必要です。資本リスクが上がるし、技術以外のリスクも増えるからです。

しかし一方で、ディープテックスタートアップへの中途半端な資金提供は、むしろ顧客との摩擦を生む事業構造しか作れなくなり、スピードが出せず、そのスタートアップの可能性だけではなく、その元となった技術の可能性をも殺してしまう可能性があります。

最初の摩擦がある部分をどのように乗り越えるか、という点においては、最初からある程度大きな資金を投資して、技術以外の部分の垂直統合も検討した方が、投資家と起業家の両者にとってリスクが緩和されうる道筋にもなります。

仮にフルスタックでなくとも、バリューチェーンを伸ばした方が摩擦が少なくなる可能性もあると思います。

この記事をきっかけに、

  • 「初期にどこまでバリューチェーンを伸ばす方が良いか」
  • 「気になるリスクを緩和するために何を精緻にすれば良いのか」
  • 「そのリスクを受容できるだけの大きな構想を描けるのか」

を起業家ー投資家間で議論していけるようになると良いのでは、と思っています。

まとめ

良い構想を持つスタートアップに対して、より大きなお金をつけて、より大きく精緻な構想を描くように促すことが、日本からフルスタック・ディープテック・スタートアップを生み出していくためには必要です。

特に初期から大きなお金が必要になるため、投資家や補助金担当者の一部が、こうした戦略があるということを認識し、それに賛同する状況を作れなければ、おそらく「リスクが高すぎる」という判断がされ、この戦略を取れるスタートアップはいなくなってしまうでしょう。

逆に言えば、こうした考えや戦略を持つ投資家が増えることで、この戦略を取れるスタートアップは多くなりるということです。

この原稿は私の仮説であり、一種の言説です。ただこうした言説に多くの人が触れて、一部の投資家の方々がこの言説に近い信念を持つとき、お金が集まり、起業家の皆さんが実際にこうした挑戦ができるようになる類いの言説ではないかと思います。

そうした仲間捜しという意味で、こうした戦略を共有することは意味があるのではないかと思い、書いておきます。