ルールが変わる世界では真面目な人ほど不利になる
この記事は 2016年5月28日 に Medium で公開したものです。
徐々にルールが変わるサッカーをプレイしている様子を想像してみてください。
最初はルールブック通りだったサッカーなのに、徐々に人数ルールが厳しくなり、6 人退場させられて 5 人でプレイすることを強制させられます。あるいはそうした明示的な反則が取られなくても、たまたまボールが手に当たっても反則を取られなかったことから、いつの間にかハンドが許可されていることに気づいた人がボールを手でつかみ始め、次第にみんな手でボールを運びだしてタックルしあっている、といったサッカーです。
そんなとき、手元にある古いルールブック通りの真面目なサッカーをしていると、その人は恐らく不利なゲームを強いられます。
手元にある少し古びたルールブックから今と将来のルールを推測して行動する、たぶん我々がビジネスやアカデミアで関わる世界はそんな世界ではないかなと思います。
ビジネスのパラダイムが変わるとルールが変わると言われています。そして昨今はパラダイムが変わるスパンが短くなっているようです。たとえばスマートフォンは PC と比べると圧倒的なスピードで普及し、IT 業界のビジネスルールや収益構造を僅かな期間で大きく変えました。

各テクノロジの普及率が 10% から 40% に至るまでの年数:https://ark-invest.com/webx0/quick-fire-spread-smartphones-tablets
テクノロジの普及のスピードが増す中、日本人はじっくりと時間をかけて物事を最適化したり卓越することが得意な一方で、ルールを作ったりルールに適応するのが苦手と言われ、スピード感のある市場の変化に合わせていくのは不利だとも言われます。もちろんそうした動きの遅さが結果的に功を奏して残存者利益を獲得することもあるので、一概に悪い性質だとも言い切れませんが、ただ市場が小さくなる中で個人のキャリアが危機に晒される可能性は高まります。
一つ上の抽象度で真面目になる
工学系や理学系の学生や若手社会人の皆さんと話していると皆さん真面目です。真面目でないと就職できないと言われているからか、あるいは余裕が無いからなのか、今の若手は過剰なまでに真面目に物事に取り組むとすら聞きます。ただその際、古いルールブックに真面目に従っているが故に、逆に不利なゲームを強いられている場合や搾取されている場合も結構多いのではないかと思います。
それはリスクや投資といった考え方を習わなかったという教育の問題もあるのかもしれません。私も工学系の学校に通っていたとき、そんな考え方を教えてもらったことはなかったように思います。
国全体が経済成長を遂げている時代は、目の前のことに真面目に取り組むことが最適解でした。徐々にそうではなくなってきている今は、一つ上のメタなレイヤー、つまりキャリアの戦略や自己投資といったレイヤーにおいて真面目になることが重要なのではないかと思います。
新しいルールを模索する
一方、親や先生は前の世代のルールを押しつけてきます。大企業で実直に頑張ったり医者や弁護士を勧めるのは、それが彼らの世代にとってのベストな選択肢だったからです。しかし恐らく我々が伝えるべきなのは、そうした古いルールブックをベースに、今の時代に最適な新しいルールを模索したり実験したりしていくやり方ではないかと思います。
そのためには自分の興味関心に従って少しだけ逸脱すること、上のサッカーの例で言えば、失敗したときのダウンサイドリスクをカバーできる範囲であえて試しにハンドをしてみること。実世界ではたとえばサイドプロジェクトを始めたり、キャリア上の実験をすることではないかと思います。
そのとき重要な姿勢は、実験の多くが失敗するという前提で始めることであり、失敗の損失に対してリターンが予測不可能なほどに大きくなりそうなものに賭ける、という convex tinkering の考え方ではないかと思います。

Antifragile からの引用:figure 6. オプションライクな試行錯誤(fail-fast モデル)のメカニズム。a.k.a. convex tinkering (凸状のいじくりまわし)。最大値が既知の損失になるような低いコストのミスと、大きなポテンシャルのペイオフ(無制限)。ポジティブなブラックスワンの中心的な特徴であり、利得は無制限(宝くじとは異なる)であり限界は既知ではない。しかしエラーからの損失は制限されており既知である。
ゆとり (slack) がない状態では逸脱したり失敗する余裕もなくなってくるので、こうした逸脱ができる時期や状況は人によって異なると思いますが、学生の期間や若い年代であればそれができることが多いのではないかと思います。それをサポートする仕組みなども徐々に出てきているので、そうしたものをうまく使えば失敗の損失も最小限ですみます。
そして予測可能な損失のなかで予測不可能なリターンをもたらす手段の一つがスタートアップやサイドプロジェクトという形態です。自分の戦略の模索の際には、是非ひとつの選択肢としてスタートアップやサイドプロジェクトを工学部出身の学生の皆さんにも考えて欲しいなと思っています。