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Andreessen Horowitz に関してのメモ (2015)

この記事は 2015年1月25日 に Medium で公開したものです。

YC に続いて Andreessen Horowitz の話をします。スライドにまとめようかと思いましたが、それほどの分量にもならないと思うのでドキュメントのみです。

Marc と Ben

a16z では「a16z の人がスタートアップとのミーティングに遅刻したら1分あたり10ドル(5分で50ドル!)の罰金」という原則にも端的に表れているように、スタートアップをリスペクトする文化を意識的に作っているようです。

Transcript: The keys to Andreessen Horowitz's successfortune.com

そうした起業家ファーストな文化を背景に、YC と同様、スタートアップをどれだけ製品開発と顧客に集中させて、それ以外の業務をVC側で引き受けられるか、というところに気を払っているのが特徴的なように見えます。

具体的にはAndreessen Horowitz では通常の投資業務をする 27 人の投資家のほかに、19 人のマーケットデベロップメント担当、7人のExecutive Recruiting、12人のテクニカルリクルーター、9人のマーケティング支援担当、4人の corporate development (いわゆる Exit 支援) 担当、22人のオペレーション(Marketing など)支援担当を採用し、通常の VC とは規模の違うチームを構成しています。これにより、投資だけではない継続的な value-up を支援を可能にしています。

Teama16z.com

サポートメンバーの人数の多さ

そうした大きな戦略性を持ったうえで、a16z の戦術的な部分として目立つのは以下なのかなと思います。

1. コンテンツによる好循環の構築
2. チームとソフトウェアによる Relationship Management
3. 継続的な新しい取り組み

■ 1. コンテンツによる好循環の構築

YC にとっての Paul Graham や GV の Library がそうであるように、a16z では様々なコンテンツをコンスタントに出してます。

スタートアップのエコシステムに役立つコンテンツ供給をすることで、 VC としてのマーケティングに繋がっているように見えます。またコンテンツ供給を通して、ファウンダーから尊敬を得ている面があり、その結果良いディールを得られている、という結果につながっているのではないでしょうか。具体的なコンテンツとしてはたとえば、

1.1 Marc の Tweet Storm
1.2 Ben の The Hard Things about Hard Thing (書籍)
1.3 Chris Dixon や Benedict Evans など、full-time パートナーのブログ
1.4 Steven Sinofsky をはじめとした part time のパートナーブログ
1.5 Professor in Residence (Visiting Professor) らのインタビュー記事
1.6 a16z Podcast
1.7 スタートアップ系イベントでの登壇(そこまで多くない印象ですが、Academic Roundtable などを主催してたり)

など、積極的かつ継続的に情報提供を続けている点は凄いなと思える点です。

こうしてこれまで陰に隠れていた VC の存在をよりオープンなものにしたほか、投資判断に関する透明性や何に注目しているのかといったような情報が届くようになって、より a16z の信用度が上がっているように見えます。

これまで個々のキャピタリストが情報を出していることはあっても、組織的にこのレベルでコンテンツを出しているところは 、US の VC 界隈でも少ないと言えます。もちろんほかの VC でも多少は情報を出しているのですが、それ以上のコンテンツの物量を出しているのが a16z の凄いところです。

なお、似たようなことを YC もしていて、YC は何より Hacker News というコンテンツ + コミュニティを持っていて強いです。ということで次はコミュニティ系の話で RM です。

■ 2. Relationship Management

a16z ではネットワーキング用のチームが合計19人もいるぐらい関係構築に力を入れています。

特筆すべきは、CRM ツールの使い方です。通常のVCではパートナーレベルの人が隠したがっていた人的ネットワークを CRM ツールに入れて社内で誰でも利用している点が新しいように見えます。

その結果、a16zの担当者ならだれでも人脈の活用ができ、組織として支援をスケールできるようになっています。

McK や GS の人が Outperform を出せるのは少なからずインターナルのツールの力 (McK は KMS やデザインチーム, GS は SecDB) があるからではないか、という話もあり、このような社内ツールを整えているのも、さすがソフトウェア開発者らによる VC といったところでしょうか。

AH is doing some remarkable stuff. 1) Like any great knowledge based firm - whi... | Hacker Newsnews.ycombinator.com

VC にとって RM をちゃんとやるのは大きく3つ意味があって、

2.1 顧客(支援先スタートアップにとっての)
2.2 人材(同上)

です(あとLPですが、そちらは割愛します)。

2.1 である顧客とのつながりを VC が持っておくことで、スタートアップが得られるものは、

2.1.1 顧客開発(インタビュー)
2.1.2 顧客/セールス相手
2.1.3 事業パートナー
2.1.4 Exit 先

の大きく 4 つです。

特に B2B エリアで 2.1.1 と 2.1.2 は効果的です。B2C や C2C はコネクションでどうこうなる話ではないですけれど、2.1.3 のパートナリングは大きくて、それぞれのトラクションを得るためのナレッジの交換やツールの仕入れなどができるようになります。後は当然 Exit 先も探さなければいけないので Corporate Development チームがそのあたりを頑張る仕組みです。

次に 2.2 タレントですが、

2.2.1 エグゼクティブタレント
2.2.2 テクニカルタレント

の2種類のチームに分けて管理しています。

スタートアップは組織規模が50 人ぐらいになったところから優秀なマネジメント層(それこそプライバシートレーニングとかセクハラ対策とかも含めて)が必要になってくる印象ですが、若者が始めたスタートアップはいわゆるマネジメントをしてきた層とのコネクションがないので、そこをフォローできる人材バンクが必要です。多くのVCは通常そのあたりのタレントネットワークは持っています。

a16z で新しいのは Callahan を中心に technical talent のネットワーキングも開始したところです。12人のテクニカルタレントへのネットワーキングを行う人を in-house で持ち、特に優秀なエンジニアとプロダクトマネージャとデザイナーのDBを拡充しています。そこでスケールするシステムが必要になって CRM 導入という形が効いてきているのではないかなと。ちなみにコードの質をチェックしたりしているらしいです。

Why You Have To Meet Shannon Callahan-She Can Make Your Silicon Valley Careerbusinessinsider.com

2012年時点で 1,000 人の executive、5,000 人の engineer / designer / product manager の登録が DB 内にあって、主に学校系を出自とするネットワークが強いそうですが、コミュニティやミートアップのサポートなどを通して DB を拡充している模様です。そのDBを活用して数年前の時点でポートフォリオへの 1,300 人の人材紹介、うち 130 人が採用に至る、と素晴らしい成果が出ています(元からの知り合いとかでない限り、スタートアップにとっては数十人面接して1人採るぐらいな印象なのでかなり高いのではないでしょうか)。

なお、同様の取り組みとして Charles River Venture が biz dev サービスをスタートアップに提供しているようです。

一方 YC の話をすると、YC のネットワークは2種類あって HN と卒業生です。HN には多くのテクニカルなエンジニアが集まるほか、YC 生は job description を投げられるようになっていて、HN経由でトップレベルのエンジニアの採用を手助けしてくれます。また YC は卒業生のネットワークが 2,000 人に近づいてきており、単純にファウンダー同士で様々な顧客やパートナーの紹介がされるだけではなく、一度スタートアップに失敗してしまっても、成功している同期生や卒業生のスタートアップに合併吸収されるといった防波堤的な役割があります。

■ 3. 継続的な新しい取り組み

a16z は見ている限り、新しい取り組みをし続けていて、たとえば

3.1 In-house specialized partners
3.2 Internal Tools
3.3 Professor in Residence

などを個人的には注目しています。

in-house の人材の話は上記でいろいろしたので、詳細は省きますが、これは Hollywood のタレント管理システムを参考に、特に CCA や Allen & Company にインスパイアされているようです。

Why Andreessen Horowitz Models Itself After A Hollywood Talent Agencyblogs.wsj.com

個人的に注目なのは 3.2 の internal tools で、CRM をはじめとして様々なソフトウェアで VC 業務をスケールさせようとしていることです。これはYCにも通じるところでありますが、ソフトウェアに投資する側がソフトウェアを使わない、というのは正直避けたほうが良い事態だと思うので、すごく好ましいと思っています。なお YC や a16z のほか、First Round Capital なども internal tools を活用していて、FRC はポートフォリオ間でのディスカッションボードなどを運営している模様です。

3.3 の professor は最近頑張っているところですが、Stanford などの大学を中心に Interdisciplinary なエリアを専門とする教授を Professor in Residence として採用し、R&D出身のスタートアップを支える体制になりつつあります。YC も Sam Altman の方向性的にそっちのように見えるので、YC 出身でアカデミアといえば a16z が引き受けることになるのかもしれません。

と、Andreessen Horowitz は凄いなぁと思った感想文でした。

■ Reference

How Andreessen Horowitz Is Disrupting Silicon Valleymedium.com

http://www.vccafe.com/2011/04/27/how-can-venture-capital-funds-differentiate-themselves-vc-wish-list-part-2/

Andreessen, Horowitz: Venture Capital's New Bad Boysforbes.com

What other VC firms have developed a relationship management system similar to Andreesen Horowitz…quora.com