スタートアップエコシステムと街づくり
この記事は 2016年5月27日 に Medium で公開したものです。
スタートアップのエコシステムを考えるには、国という単位よりも街という単位で考えたほうが良いという論があり、個人的にも賛成です。
US 内部でも Bay Area と NY のスタートアップは異なるという話はよく聞きます。たとえばメディア系のスタートアップは NY が盛んと聞きますし、Boston は歴史的に Life Science 系のスタートアップをよく輩出しています。このように地域性が関わる理由は、採用できる人材や顧客の近くに会社を作ったほうが何かと良い、という側面も大きいのではないかと思います。実際、特定の問題に適した場所で創業するというのは創業者の大きな仕事の一つだと Reid Hoffman は指摘しています。
スタートアップの街に必要な 2 種類の人間
健全なスタートアップエコシステムを特定の街につくるために最低限必要なものは、Paul Graham が指摘する通り、
- 見る目のある投資家
- 若いオタク
の二つであり、その街をスタートアップハブにするには「金持ちが住みたがる都市に一流の大学を作ればいい」という言葉にまとめられます。
そしてオタクを獲得するには、クラブよりカフェ、衣料店より古本屋、ダンスよりハイキングを好む街にして、
- 大量生産された店ではなく個人商店
- 古い建物の保存(大規模な開発の禁止)
- 自転車に優しい土地
- 一流の大学
そしてその密度を確保することなどが重要であると Paul Graham は指摘しています。密度がないと人の出会いの偶然が起きないという理由です。
その他にも、たとえば Portland や Boston のようにアートの振興(アートやスタートアップのような、少し変なものを受け入れる土壌)なども一つの手段ではないかと思います。実際 Portland で行われる XOXO は数年前からスタートアップの文脈で注目され始めています。
こうした例を見るに、スタートアップ支援側はどうやって街を作っていくか、という意識を持って、街づくりのムーブメントと一緒になって取り組んでいくべきなのかもしれません。実際に、たとえば Y Combinator の Sam Altman は、SF の高騰している家賃がスタートアップエコシステムに悪影響を与えていると考え、それを緩和する法案の通過に働きかけるようにスタートアップへ促しています。
#地獄のサンフランシスコ - 講演のスライドと動画chibicode.com
日本の街単位のエコシステム
2016 年の日本でも福岡や神戸、大阪といった街がスタートアップの振興をはじめています。一方東京はそれなりに広いので、それぞれの街にそれぞれ違ったジャンルのスタートアップが住むことでより効果的にエコシステムを作り上げていくことが可能ではないかと思います。たとえば地域的に特定のジャンルが密集していれば、情報交換や人材の流動性なども確保できるはずです。
とはいえ意図せずとも、渋谷や恵比寿は Web やモバイルの B2C 系が集まり(ビットバレーという呼称もありました)、五反田は少し特殊、九段下から神保町あたりは B2B、東京から大手町は FinTech など、私の知っている範囲でも多少色がつき始めているようです。また私の住む本郷は本郷で研究やハードテックのスタートアップが集まっている印象があります。また SV での VC の集積地である Sand Hill Road のようなものを六本木アークヒルズに作ろうとしている (VC が数社入り、TechShop も場内に) 動きもあるようです。
これからスタートアップを始める人は、どの街が自分のやりたいスタートアップにとって最適なのか考えながらはじめる場所を選ぶことをお勧めします。そしてそこに十分な密度があれば以下のようなことも起こるようです(お互いに顔見知りであればですが)。
これを書いているとき、私はシリコン・バレーにおけるベンチャー起業家の人口密度の高さを知る機会に出会った。「オレン・フムス」で絶品のランチを食べるために、ジェシカと私は自転車に乗ってパロアルトの大学通りを走った。店の中を歩くと、ドアの近くに座っていたチャーリー・チーバ(Quora社の共同設立者、Facebookの元社員)に会った。セリナ・トバコワラ(サーベイ・モンキー社の技術部門副社長)が、出口で立ち止まって挨拶してくれた。ジョシュ・ウィルソンが持ち帰りの弁当を取りにやってきた。昼食後に、私たちはフローズン・ヨーグルトを食べに行った。その途中でラジャ・スーリに会った。ヨーグルト売り場に到着したら、デイブ・シェンがいた。外を歩いていると、ユーリ・サガロフに出会った。1ブロックほどいっしょに歩いた。その後、私たちはムザミル・ザベリ、そしてそして次のブロックでオーディン・センクに会った。これがパロアルトでの日常だ。私は人々に会おうとしていたわけじゃない。単に昼食を食べようとしていただけだった。また私の思うに、確かに会ったことはあるのだが覚えていない人が5人以上はいた。もし私たちのそばにロン・コンウェーがいれば、彼は30人の知人と会っていただろう。(Paul Graham, スタートアップハブが成功している理由、lionfan さん訳)